パンケーキデイ

明日は、シュロブ・チューズデイ(Shrove Tuesday 告解の火曜日)、イギリスでは俗に「パンケーキデイ Pancake Day」として知られる日です。アッシュ・ウェンズデイ(Ash Wednesday 灰の水曜日)前日の シュロブ・チューズデイに、パンケーキ(ホットケーキ)を作って食べるという、この国のキリスト教関係の習慣から来たもの。イースターサンデイ(復活際)の47日前に設定されているシュロブ・チューズデイは、2月4日~3月10日の間で、年毎に日付が移動します。ちなみに、シュロブ・チューズデイという名称は、懺悔をするという意味のシュライビング(shriving)という古い言葉が起源だそうです。

アッシュ・ウェンズデイから、イースター・サンデイまでの、46日間(日曜日を除くと40日間)がレント(Lent 四旬節)称される期間ですが、これは、洗礼者ヨハネから洗礼を受けた後、キリストが、人里離れた荒野で40日間、誘惑に絶えながら断食をしたことから、キリストの復活を祝うイースターに向け、40日間、己の過去の行いなどを振り返り、心を清め、自制する期間とされています。ちなみに、レントという言葉自体は、古い英語で春を意味するのだとか。

レントの期間中、本来は、肉、魚、卵、乳製品、その他の贅沢な食べ物を避け、質素な食事をする伝統から、前日のシュロブ・チューズデイに、ちょっとしたご馳走を食べたのです。レント期間に手を付けず、40日も放っておくと腐ってしまうような物を、この日に、平らげてしまう意味からも、卵、バター、牛乳に、小麦を足すだけで、使い切ってしまえるパンケーキを作るのは、グッドアイデアであったわけです。パンケーキをこの日に食べる・・・というのは、イギリスの他、アイルランド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも習慣となっているようです。他のキリスト教国では、国により食べるもの多少違うようですし、カーニバル(謝肉祭)などをこの日に行うところもあり、ブラジルの、有名なリオのカーニバルの最終日は、この告解の火曜日に当たります。節制の前のどんちゃか騒ぎですね。カーニバルという言葉の意味は、もともとは、「肉にさよなら」。フランス等での、この日の名称は「太った火曜日(脂肪の火曜日)」で、コンセプトは同じです。

パンケーキデイには、また、エプロン姿でフライパンの上にパンケーキを乗せて走る、パンケーキ競争なども各地で開催されたりしますが、これも、わりと古い歴史を持っているのだそうで。1445年、ある女性が、告解の火曜日に、時間を忘れ、家で忙しくパンケーキを焼いていたところ、懺悔のための、参列者を呼ぶ教会の鐘が響き渡るのを聞き、この女性、大慌てで、エプロン姿で、フライパンを手にしたまま、教会へ駆けていったのが、その始まりと言います。本当かな・・・。パンケーキ競争の中でも有名なものが、バッキンガムシャー州のオーニー(Olney)のもので、エプロン姿でフライパンを手に町のマーケットプレースを出発し、教会までかけっこ。その後に、教会で、告解の火曜日の儀式が行われるという事。

レントの開始日である、翌日のアッシュ・ウェンズデイの教会の儀式は、前年のパーム・サンデイ(棕櫚の主日)に使用した棕櫚の十字架を燃やし、その灰を聖水に混ぜ、礼拝者の額に、灰で十字を塗る、というもの。灰の十字は、人間の身体はいずれ滅びる事と懺悔の印。牧師さんが、「汝、土より生まれ、土に返る」と、礼拝者たちの額に十字架を描き、これを洗い落とさずに、外へ繰り出す人もいるようですが、儀式で自分の心は洗われたとし、教会を去るときに、洗い落としていく人もいるということですが、イングランド内で、アッシュ・ウェンズデイに、灰の十字を額につけて道行く人は、ほとんど見ない気がします。

レントの最終週が、棕櫚の主日、洗足木曜日、キリスト処刑、そして復活へと続く、受難週間となります。

現在、レントの間、贅沢な食べ物に一切手を出さない、などという人はほとんどいないでしょうが、パンケーキ・デイにパンケーキを食べる人は、いまだ沢山います。パンケーキ競争も、カーニバルも、無くなる事はないでしょうし。人間、苦行より、楽しい事が好きなんです、やはり。

我が家では、パンケーキをフライパンから放り上げてひっくり返すのが得意なだんなが、いつも、パンケーキを作る係りです。ついでに、彼の方法によるパンケーキ(ホットケーキ)の作り方を紹介しておきます。

材料(4枚分)卵4個、小麦粉、牛乳、バター、塩こしょうをほんの少々

だんなは、いつも小麦粉を目分量で混ぜるので、はっきりしたグラム数がわかりません・・・4枚に卵4個を使うと言うのも、わりと贅沢です。レシピによっては、4枚に1個などというのもありますので。その場合は、牛乳をもっとたっぷり使うのでしょう。ともあれ・・・

ボールに卵4個を割って混ぜる。そこへ、少しずつ小麦粉を混ぜていく。だまだまができないようにするには、サイバシを1本だけ使うのがいいとか、うちのだんなは言っていますが。良く、スムースになるよう混ぜ、最終的に、サイバシを持ち上げたとき、蜂蜜程度のやわらかさで、しずくとなって落ちる程度のゆるさになるよう、要は、あまり小麦粉を入れすぎないように。その後、牛乳を少々混ぜ、なめらかに。塩と白こしょうを、ごくわずか振り入れる(これは無くてもOKです)。だまだまが無くなるまで混ぜたら、そのまま15分から30分置く。

熱々のフライパンにバターを一塊溶かし、バターが焦げない程度に、それでも、かなり熱くする。混ぜた物の4分の1をフライパンに注ぎ、満遍なく、フライパンを動かし広げる。しばらくそのままにし、表面が液状で無くなったら、ひっくり返す。焦げないように様子を見ながら反対側を焼く。フライパンに油がしみ渡るので、2枚目以降の方が、張り付きにくく、焼きやすいというのはあるようです。

冷めるとおいしくないので、焼き上がり熱々をいただきましょう。この国では、伝統的にレモンを絞って食べるのが主流ですが、当然、ジャムやチョコレートなど他のトッピングでもグッドです。クレープみたいなものですから。うちは、メープルシロップとレモンをかけます。

最近、コレステロールが心配な私。キリスト様の荒野での断食を真似るというより、健康のため、パンケーキを食べた後、数日は、あまりこってりしたものは食べないようにします。

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