ストロベリーの季節

最近は、冬の間でもオランダやスペインから輸入されてくるので、食べようと思えば、ほぼ一年中食べられる苺ですが、味と甘さにかけては、やはり旬のイギリスの苺がぴか一。先週、チップトリージャム工場のティールームにお茶に行ったご近所のおばあさんから、そこで買ったという苺をもらいました。ジャム工場周辺の農場で取れたもので、これが、美味しかった、美味しかった。口に突っ込んでから、へたを引っ張ると、すぽんとぬけるほど良く熟れていて甘さが口いっぱいに広がり、あーしあわせ、と思える美味さ。スーパーのものとは雲泥の差でした。ちなみに、イギリスのスーパーに出回る苺の80%は、エルサントと呼ばれる種だということです。棚もちがするというのが、スーパーがこの種を好む理由のようです。

苺というのは、風変わりなフルーツで、赤い部分はいわゆる花托に当たり、外についている粒粒が本当の意味でのフルーツ部なのだそうです。

イギリス苺の季節の到来は、テニスのグラス・コート・シーズンの到来とほぼ同時期。先日、ナダルの8回目のフレンチ・オープンの優勝でクレー・コート・シーズンが終わり、今週からは、ウィンプルドンに向けてクイーンズなどでグラス・コート・シーズンの幕開けです。

ウィンブルドン・テニス・トーナメントで食されるものとして、最初に頭に浮かぶのは、ストロベリーとクリーム。ウィンブルドンのオフィシャルサイトによると、ウィンブルドンで売られる苺は、主にケント州産の一級品の苺たちで、売られる前日に摘まれ、早朝にウィンブルドンに到着し、品質検査を受けるそうです。トーナメント期間中、来訪者達に食される苺の量は2万8千キロ、クリームの量は7千リットル。

また、イギリスの苺というと、トマス・ハーディー作「ダーバヴィル家のテス」(Tess of the d'Urbervilles)の中の、あの苺シーンも思い起こされます。テスがアレック・ダーバヴィルと初めて会い、苺をアレックの指から食べるという場面。このくだり、わりと色気があるので、以前、あるニュースキャスターが、「少年の頃、テスを初めて読んだ時、この場面にかなりどきどきした。」と言ってたのを覚えています。

アレックにストロベリーは好きかと聞かれ、「季節になったら、好き」と答えるテス。

"They are already here."
D'Urberville began gathering specimens of the fruit for her, handing them back to her as he stooped; and, presently, selecting a specially fine product of the "British Queen" variety, he stood up and held it by the stem to her mouth.
"No,no!" she said quickly, putting her fingers between his hand and her lips. "I would rather take it in my own hand."
"Nonsense!" he insisted; and in a slight distress she parted her lips and took it in.

「(苺は)もう、なっているよ。」
ダーバヴィルは、テスのために、苺を集め始めた。そして、かがみこみみながら苺をテスに手渡し、特に良質の種である「ブリティッシュ・クィーン」をひとつ選ぶと、立ち上がり、へたを指でつまみ、テスの口の前にぶらさげた。
「ううん。」テスは、あわてて、指をダーバヴィルの指と自分の口の間に掲げた。「私、自分の手で食べたほうがいいわ・・・」
「つまらないことを言ってないで!」とダーバヴィルは後に引かない。テスは、いささか当惑しながらも、唇を開き、苺を受け取った。

(写真は、BBCのテレビ版からのものです。)

苺を使ったサマーデザートとして、イートン・メスというものがあります。これは、つぶした苺とクリームと、砕いたメレンゲをぐちゃっと混ぜたもの。イートン校とハーロー校とのクリケット試合の際に食されてきて、19世紀からこの名前で知られてきたデザートです。イートン・メスは、結構しつこい感じで、私は、ちょっといまいち。小さな器にちょっとだけならいいけれど。特に、上等な苺は、わざわざ潰すというのも、もったいない話で。フルーツシェークとか、100%果汁のジュースなども、フルーツを食べるかわりの健康食品のイメージがあるものの、繊維をずたずたにしてしまう分、果物を直接食べるよりも、ヘルシー度はおちると言いますし。

良い苺を手に入れたら、イートン・メスなどにせず、クリームもつけずに、そのまま食べるのが、やはり一番美味しいのではないでしょうか。テス風に、新鮮な旬の香りと味をそのままに。私がぱくぱくと次から次へ苺を食べるさまは、色気も何もあったものではないですが。

この夏は、しばらく行っていないイチゴ狩りにも1回くらい行ってみたいものです。

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