まきストーブのある家

我が家とうちの周辺の住宅街は、1960年代初めに建てられたもので、私達は、この家の4番目のオーナーです。購入当時から、居間には、効率は良いものの、なんとも見栄えの悪い、70年代に取り付けられたガスヒーターがすえられていましたが、ついに先週、このヒーターを取り除いて、煙突を開け、代わりに薪ストーブを取リ付けました。うちの通りでは、過去2年で、薪ストーブを入れた家は我が家で3件目。ガス代の上昇とともに、薪ストーブ人気も上昇していますので、将来的にどんどん増えていくかもしれません。

ご近所で、当住宅地ができたころからずっと住んでいる住人は、もう数少なく、2件先のWおばあさんがその一人。彼女、この辺りが新興住宅地だった60年代に、空から取った写真を持っていて、それは何度も見せられました。その写真には、うちの通りと、周辺の2,3の通りが見れるものの、その他は駅までずっと野原。まだのどかで、牛なども放牧されていたようです。この辺りの家が新築の頃は、各家、居間には石炭を燃やす暖炉があったそうですが、それも70年代になると、皆、ガスヒーターに切り替えていったということ。ですから、各庭には、石炭貯蔵用の小さなレンガの小屋もあり、我が家では、おそらく2代目のオーナーが、ガスヒーターを入れた際に、要らなくなった石炭小屋を半分崩して、正方形のレンガの花壇に変えてそのままになっていた模様。今回、薪ストーブを入れるにあたり、この花壇を土台まで崩して、その上に、薪貯蔵用のログ・ストアを置きました。ですから、この庭の一角は、石炭貯蔵小屋から花壇、薪置き場へと変身。そしてまた、居間の暖房も、石炭暖炉、ガスヒーター、薪トーブへ。家に歴史ありです。

上の写真が、石炭貯蔵庫の跡に置いた薪貯蔵場。薪の大量注文をするまでは、ガーデニング道具の臨時置き場となりそうです。

そういえば、前回のクリスマス・イブに放映されたアニメ、「スノーマンとスノードッグ」では、主人公の男の子が、オリジナルの「スノーマン」の少年が住んでいた家に、30年後に引っ越してくるわけですが、オリジナルでは、この家の居間には、普通に火を燃やす暖炉が描かれていたのが、新作のほうでは、この暖炉に、薪ストーブが据えられていたのに目がついたのでした。(ついでながら、このアニメで時代の流れを感じたのは、オリジナルでは少年は、ちゃんとお父さんとお母さんがいたのに、新作のほうでは、少年はどうやらシングル・マザーの子供で、お母さんしかいなかった。また、田舎の一軒家だったおうちが、新作では、住宅街の真ん中になっていたりもし、作る側も、一応、現状を考慮にいれて描いているなと思ったのです。)

さて、更に、近所のWおばあさんによると、60年代、うちの周辺は、スモーク・コントロール・エリア(煙抑制地域)だったので、石炭も、蒸してガス抜きをしてあるコークスの仕様が義務付けられていたのだそうです。また、うちのだんなの実家でも、10歳くらいになるまで、家には、2つ暖炉があって、やはりスモーク・コントロール・エリアに住んできたので、無煙石炭やコークスを燃やしていたそう。やがて、暖炉はひとつは塞ぎ、ひとつにはガスヒーターを設置し、勝手口のすぐ脇にあった石炭貯蔵庫は、物置と化したと言います。だんなの幼馴染の家では、この石炭貯蔵庫を、1階のトイレに改造したとか。

このスモーク・コントロール・エリアというのは、石炭をぼんぼん燃やしていた時代の名残で、1952年に、悪名高きロンドンの大スモッグで大勢の死人が出てから、空気汚染対策として、国会で1956年に、クリーン・エア法が通り、ロンドンなどの都会の人口密集地は、煙抑制地域に指定され、煙排出量の高い燃料を燃やす事を禁止する方針となったことに由来します。

まあ、暖炉で火を燃やすオープン・ファイヤーは、部屋も少々汚れ、その上、ドアを開けると、すぐに熱も逃げて効率が悪いらしく、いずれにせよ、70年代には、皆、暖炉を塞いで、代わりに、スイッチひねるとすぐに暖かくなり、火の始末を心配せずすぐに消せるガスや電気のヒーターを設置するようになった次第。その上、更に、どの家庭もセントラルヒーティングを設置するようになると、居間のヒーターは、予備暖房として2軍落ち。うちでも、暖房はほとんどセントラルヒーティングに頼り、居間のガスヒーターを使用するのは、ほんの時々となっていました。

こうして、暖炉使用が減った今では、煙はあまり問題とはならず、この周辺は、現在もスモーク・コントロール・エリアではあるようですが、気にする人もいなくなったわけです。ただ、薪ストーブの人気が高まるにつれ、近所中の家が皆、薪を燃やし始めると、再び、排出する煙の量が問題視される可能性があるかも・・・と心配し、今回の薪ストーブの購入には、クリーン・バーン・テクノロジーを使用した、煙排出量の少ないものを選べました。先手必勝。

薪ストーブを置く暖炉には、昔ながらのマントルピースを、リサイクルしたレンガとタイルで作ってもらうことにしましたが、なんでも最近は、ミニマリズムが主流で、設置を頼んだ業者さんによると、「昔からある古い暖炉の修理以外では、最近、こうしたレンガのファイヤープレースを作ってくれとと頼まれることはあまりないよ。壁の穴に、ストーブをぽんとはめ込むだけのようなケースが多い。」のだそうです。私もだんなも比較的伝統的な見栄えのものが好きなので、「私らは、レンガの昔っぽいファイヤー・プレイスが好きだから、これで満足じゃ。」というと、業者さんも、「おいらも、伝統的なものの方が好きだ。」と一致団結。設置前に、まずガスヒーターを壁からはずすと、ミイラ化した鳥の死骸が出てきました。ガスヒーターをつけると煙突が暖かくなるので、鳥が煙突にとまり、そこで一酸化中毒を起こして、煙突から転がり落っこちるのだ、と業者さんに説明されましたが。

薪ストーブでも、冬中使用すると、1年に一回は煙突掃除が必要とやらで、業者から、煙突掃除屋の連絡先も教えてもらいました。今でも煙突掃除で生計立てている人いるわけです。ヴィクトリア朝ではないので、来てくださいと頼んだら、ぼろ服を着て、顔をすすだらけにした10歳くらいの男の子が煙突掃除に来るなんて事は、もう無いでしょうけれど。

レンガのセメントがしっかり固まるまで、1週間は使うのを待ってくれ、と言われ、待っているうちに、段々気温が上昇し、薪ストーブを焚きたくなるような天気ではなくなってきた・・・。ま、人生こんなもんです。植物の成長が例年より20日遅れているという寒い春で、暖かくなるのを非常に楽しみにしていたのに、今度は、薪ストーブを思いっきり焚けるように、2,3日、寒い日ないかな・・・と思う始末。

1週間待った昨夜、ついに、試しの初点火!薪の量をさほど入れなかったので、部屋中トロピカル、というほど暖かくはなりませんでしたが、炎がちらちらゆれるのを見ているのは楽しいのです。テレビが隣についていたのに、目は、テレビと炎との間を行ったりきたり。炎が消えた後も、赤くすぶる薪が、長い間熱を発して、じわじわ暖かいので、眠れないときなど、ストーブの前の安楽いすに陣取って、遅くまで本でも読んでいたくなる感じです。これからの季節、後何回使うかはわかりませんが、うさんくさいイギリスの冬に楽しみとするものがひとつ増えたのは良い事です。

ガス以外に、暖を取れる方法があるのも安心。先月後半、ぐずぐずと寒さが続いた事と、ベルギーからのガスを運ぶパイプラインが故障したため、国内のガスの貯蔵量が底をつきはじめ、そのままだと2週間後に国内はガス切れになってしまうというニュースが流れました。そのため、カタールから液体ガスを乗せた船が届くのを、いまか、いまかと待っているという、なんとも心細いニュースでした。この船が沈没でもしてしまい、パイプラインの修理にもっと時間がかかったら大変な騒ぎとなったことでしょう。こんな時でも、薪ストーブがあれば、紅茶を飲むお湯くらいは沸かすことができるし、凍死することはまずない・・・かな。

過去の関連記事:「資源に頼る社会」「チムニア」

*後記*
近くの森に住みながら、森の管理と、薪を切り配達して生活している日本人女性とイギリス人男性のカップルに、薪を1立方メートル配達してもらいました。じゃじゃーん。

冬までこうして置いておけば、また寒くなってストーブが活躍する時期には、薪の含有水分もかなり散って良い感じになるそうです。寒さもどんとこい。

コメント

  1. ストーブ、素敵です。でも北海道だと部屋の真ん中に置くほうが熱効率が良さそう。ウチも農園のほうは薪にしたいと思っています。

    返信削除
    返信
    1. ガスヒーターのように瞬間で発火できる便利さはなく、ほくほくになるまで多少時間がかかりましたが、熱を発し始めると、周辺の空気も暖かくなり、廊下に設置してあるセントラルヒーティング用の温度計も1,2度上がっていました。いれて後悔なしです。

      削除

コメントを投稿