タータンチェックのブランケット

居間に置いてあるソファーベッドは、約20歳くらいの代物です。かなり頑丈な骨組みではあるのですが、腕の部分と座る部分の前方の布地が擦り切れ、かなりぼろくなってきています。そのためだけに買い換えるのはもったいないし、プロにカバーの張替えを頼むと、結構な値段になる、それでいて、自分で張替えるか、カバーをお裁縫する技術もない・・・となると、やはり、「上からざばっと何かをかけて覆う」という結論にたどり着くのです。同じような悩みを抱えた人たちが、薄めのスロー、ベッドカバー、ブランケットなどを被せて難をしのいでいるし。

ということで、何か、ちょうど良い大きさのカバーになるものはないかと、古いトランクの中を物色し、掘り出したのが、キングサイズのクリーム色の羊毛の毛布と、それより少々小さめの、ひざ掛けに使えそうなタータンチェックのブランケット。両方とも、だんなの両親が亡くなった後にもらってきたものです。

クリーム色の毛布で、ソファーを試しに覆ってみると、お、これはぴったりサイズ。この毛布のラベルには、義理の両親の住んでいた町にある店の名前(ウッズ)とその店のある通りの名まで書かれてありました。たしか、19世紀後半(ビクトリア朝)に創立されたかなりの老舗のベッドリネン専門店なのです。「ウッズのために作られた冬用全羊毛毛布」などともあり、羊毛織物業界のお墨付きマークもついていました。

クリーム色の毛布で覆うだけだと、ペンキ塗り屋が部屋のデコレーションをしに来て、家具をペンキから守るために覆いをかけたような雰囲気となってしまいますので、背もたれには、もうひとつのタータンチェックのブランケットをかけることにしました。これで少しはアクセントになるでしょう。こちらのタータンの毛布のラベルには、マッケンジー・ドレス(McKenzie Dress) と、このタータン柄の名称が記載され、スコットランドのフォート・ウィリアムの店の名が入っていました。義理の両親、スコットランド旅行にはちょくちょく出ていたようなので、現地で購入したものかもしれません。

マッケンジーは、スコットランドのハイランドのクラン(氏族)のひとつですので、この柄は、いわゆるクラン・タータン。ひとつのクランでも、いくつも違った柄があり、このように、ドレスと呼ばれるものや、狩猟用のものなど、調べてみると公式に登録されているマッケンジーだけでも、12の柄がありました。チェックとは言え、数限りない組み合わせの可能性があるものです。

だんなによると、彼の実家には、この他にもタータンのブランケットがあり、ホリデーや、ピクニックなどにもお供して、ピクニックマット代わりに利用したりして愛用していたそうです。さすがに、ピクニックに使われていたものは長年の重労働でよろよろになってしまい、処分したようですが、室内で使われていた、このマッケンジー・ドレスのものは、紅茶のしみがあるものの、生き延びて、こうして、今度は我が家で役立ってくれます。

思い出と逸話も織り込まれている、このセコハンの2枚のブランケットで、ソファーをカバーする作業を終了し、やれやれ、どしんと座ると、なんだか、前より暖かいぞ!白血病再々発後2回目のキモセラピーのための長期入院も、そろそろ1ヶ月経つだんなに、スカイプのビデオで、ソファーのニュー・ルックをご披露すると、かなり気に入って、「いいな。早く退院して、そのソファーで紅茶飲みたい・・・」何かにつけ、すぐ「紅茶を飲む」事が会話の中に出てくるところが、イギリス人です。

今週の初めは、3月だというのに雪まで降る始末。庭のダファデルが咲き始めたものの、まだ、羊毛ブランケットでおしりを暖めたくなるシーズンです。

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