英国王のスピーチ
この映画やっと見ました。評判どおり、良い出来でした。
*****
英国、ジョージ5世の次男坊、バーティーは、物心付くころからのどもり。公のスピーチなどでも、言葉が出てこず、膠着してしまう。何人ものスピーチセラピストに通ったものの、らち開かず、やがて、妻エリザベスの探してきた、正式な資格を持たぬ、オーストラリア人のスピーチセラピスト、ライオネル・ローグとめぐり合い、彼のもとで、少々風変わりなスピーチ訓練を始める。
まあ、それでも次男なので、王座に付く事はない・・・と思いきや・・・ジョージ5世亡き後、エドワード8世となった長男デイヴィッドは、王座について1年と立たぬうち、アメリカ人で離婚暦のあるウォリス・シンプソンと一緒になるべく、退位してしまう。いわゆる、退位危機(abdication crisis)と呼ばれる事件です。ジョージ6世として君臨することとなり、まずは、戴冠式にて、宣誓の言葉をどもらず言い、更には、戦争が始まり、せまりくるナチスドイツの脅威の下、国民の意気を高揚させる為のスピーチも、ラジオ放送で行う必要が出てくる。さてはて、ローグが見守る中、王は、どもらず、何とかスピーチをする事ができるのか。
*****
時代背景の詳細については、過去の記事「退位危機、そして、どもりの王様」まで。
この映画の中で、ローグは、幼い頃左利きだったバーティーが、矯正で右利きに直されたこと、しつけの厳しさから、彼が抑圧された幼少時を送った事などを早期に発見するのですが、なんでも、左利きを無理やり右利きに治された子供にはどもりが多いのだと。
最近、お父さんの、ジョージ5世に関するドキュメンタリーを見ましたが、彼の子供に対するしつけは、軍隊風だったという話。愛情よりも、規律と訓練で育ったわけです。が、自分の子供には非常にうるさかったジョージ5世が、孫のエリザベス(現エリザベス女王)は、めちゃめちゃ可愛がり、目の中に入れても痛くない風だったようです。また、プレーボーイでいい加減な長男よりも、まじめな次男を頼りにする事が多かったという事。
毎年クリスマスの日の午後には、テレビ、ラジオで、女王の国民へのクリスマスのメッセージが放送されますが、それを開始したのも、ジョージ5世。ヨーロッパ諸国で、王制、帝制が倒れる中、王室が生き残るには、国民とのコミュニケーションが大切であり、更には、開かれた王室としての宣伝の価値も、早くから理解していた人だったということ。また、彼は、やさしい一家の長風の声を持ち、ラジオにむいていたなどと言われます。このお父さんの後を継いで、ラジオ放送を引き継ぐ事も、バーティーにはプレッシャーだったのでしょう。
映画にも描かれているとおり、普通の喋りではどもってしまう人が、歌うと全くどもらない、というのは、良くあるようです。イギリスのタレントショー、ポップ・アイドルで世に出た歌手、ギャレス・ゲイツなども、大変などもりであったのが、歌いだすと、まったくその気配も見せなかったのが頭に浮かびます。
きちんとした資格を持たないローグを横目で見ながら、「セラピストを探しているのだったら、自分が、正式な資格を持つセラピストを紹介したのに。」とのたまうカンタベリー大主教には、イギリスのエスタブリッシュメントの、部外者、権威の無いものをあなどる態度が良く現れています。王本人にとっては、すばらしい肩書きも、証明書も、自分のどもりを治してくれなければ意味が無い。実際、そういった権威ある王の主治医が、タバコは筋肉をリラックスさせるのに良い、などと言う事をいっていたという、エピソードが挿入されています。それに対して、医師の資格も無いローグは、たばこは身体に悪い・・・と今では当然の常識を述べ。ちなみに、ジョージ6世は、肺がんで亡くなっています。1952年の王の死まで、2人の交流は続いたといいます。
王は、ヒトラーがスピーチをかます映像を見ながら、「(何を言っているかわからないが)非常に上手に演説している」という感想をもらす場面がありますが、ヒトラーなども、鏡に向かって、効果的なジェスチャーやスピーチの練習をしたという話。公の人間にとっての、スピーチのパワーというのは強力なものがあります。相対するチャーチルも、負けず劣らずのスピーチの名手でしたから。
視覚的には、ローグの診察室等や居間のインテリア(特に壁と壁紙)が面白かったです。ペンキが剥がれたような、大きなつぎはぎパターンの壁は、背景として、特に印象的でした。
バッキンガム宮殿からトラファルガー広場へと続く道、ザ・マルの脇に、ジョージ6世の像はあります。彼の像は、1955年設置されていますが、夫亡き後の約半世紀後、2002年に101歳でなくなったクイーンマザーの像は、2009年に設置。早死にした夫とのバランスを取るためか、クイーンマザーのお顔は、比較的若く作ってあるようです。
原題:The King's Speech
監督:Tom Hooper
言語:英語
2010年
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英国、ジョージ5世の次男坊、バーティーは、物心付くころからのどもり。公のスピーチなどでも、言葉が出てこず、膠着してしまう。何人ものスピーチセラピストに通ったものの、らち開かず、やがて、妻エリザベスの探してきた、正式な資格を持たぬ、オーストラリア人のスピーチセラピスト、ライオネル・ローグとめぐり合い、彼のもとで、少々風変わりなスピーチ訓練を始める。
まあ、それでも次男なので、王座に付く事はない・・・と思いきや・・・ジョージ5世亡き後、エドワード8世となった長男デイヴィッドは、王座について1年と立たぬうち、アメリカ人で離婚暦のあるウォリス・シンプソンと一緒になるべく、退位してしまう。いわゆる、退位危機(abdication crisis)と呼ばれる事件です。ジョージ6世として君臨することとなり、まずは、戴冠式にて、宣誓の言葉をどもらず言い、更には、戦争が始まり、せまりくるナチスドイツの脅威の下、国民の意気を高揚させる為のスピーチも、ラジオ放送で行う必要が出てくる。さてはて、ローグが見守る中、王は、どもらず、何とかスピーチをする事ができるのか。
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時代背景の詳細については、過去の記事「退位危機、そして、どもりの王様」まで。
この映画の中で、ローグは、幼い頃左利きだったバーティーが、矯正で右利きに直されたこと、しつけの厳しさから、彼が抑圧された幼少時を送った事などを早期に発見するのですが、なんでも、左利きを無理やり右利きに治された子供にはどもりが多いのだと。
最近、お父さんの、ジョージ5世に関するドキュメンタリーを見ましたが、彼の子供に対するしつけは、軍隊風だったという話。愛情よりも、規律と訓練で育ったわけです。が、自分の子供には非常にうるさかったジョージ5世が、孫のエリザベス(現エリザベス女王)は、めちゃめちゃ可愛がり、目の中に入れても痛くない風だったようです。また、プレーボーイでいい加減な長男よりも、まじめな次男を頼りにする事が多かったという事。
毎年クリスマスの日の午後には、テレビ、ラジオで、女王の国民へのクリスマスのメッセージが放送されますが、それを開始したのも、ジョージ5世。ヨーロッパ諸国で、王制、帝制が倒れる中、王室が生き残るには、国民とのコミュニケーションが大切であり、更には、開かれた王室としての宣伝の価値も、早くから理解していた人だったということ。また、彼は、やさしい一家の長風の声を持ち、ラジオにむいていたなどと言われます。このお父さんの後を継いで、ラジオ放送を引き継ぐ事も、バーティーにはプレッシャーだったのでしょう。
映画にも描かれているとおり、普通の喋りではどもってしまう人が、歌うと全くどもらない、というのは、良くあるようです。イギリスのタレントショー、ポップ・アイドルで世に出た歌手、ギャレス・ゲイツなども、大変などもりであったのが、歌いだすと、まったくその気配も見せなかったのが頭に浮かびます。
きちんとした資格を持たないローグを横目で見ながら、「セラピストを探しているのだったら、自分が、正式な資格を持つセラピストを紹介したのに。」とのたまうカンタベリー大主教には、イギリスのエスタブリッシュメントの、部外者、権威の無いものをあなどる態度が良く現れています。王本人にとっては、すばらしい肩書きも、証明書も、自分のどもりを治してくれなければ意味が無い。実際、そういった権威ある王の主治医が、タバコは筋肉をリラックスさせるのに良い、などと言う事をいっていたという、エピソードが挿入されています。それに対して、医師の資格も無いローグは、たばこは身体に悪い・・・と今では当然の常識を述べ。ちなみに、ジョージ6世は、肺がんで亡くなっています。1952年の王の死まで、2人の交流は続いたといいます。
王は、ヒトラーがスピーチをかます映像を見ながら、「(何を言っているかわからないが)非常に上手に演説している」という感想をもらす場面がありますが、ヒトラーなども、鏡に向かって、効果的なジェスチャーやスピーチの練習をしたという話。公の人間にとっての、スピーチのパワーというのは強力なものがあります。相対するチャーチルも、負けず劣らずのスピーチの名手でしたから。
視覚的には、ローグの診察室等や居間のインテリア(特に壁と壁紙)が面白かったです。ペンキが剥がれたような、大きなつぎはぎパターンの壁は、背景として、特に印象的でした。
バッキンガム宮殿からトラファルガー広場へと続く道、ザ・マルの脇に、ジョージ6世の像はあります。彼の像は、1955年設置されていますが、夫亡き後の約半世紀後、2002年に101歳でなくなったクイーンマザーの像は、2009年に設置。早死にした夫とのバランスを取るためか、クイーンマザーのお顔は、比較的若く作ってあるようです。
原題:The King's Speech
監督:Tom Hooper
言語:英語
2010年
初めまして。
返信削除六つ位記事を読みました。
写真すごくきれいですね。それによーく調べた熱心な記事ですね。書くのとても大変でしょうね。大変なのわかるから、これからも、頑張って下さいね。
ここにコメントしたのは、DVD で見たからです。ドモリを直すというストーリーを知らず、英国王の映画なんてカッコいいと思ったからです。
夫婦愛、子どもへの愛、先生との信頼関係はう~んやっぱり相手に対する愛情、それと国王のイギリスに対する思いとそれに応える先生からの忠誠心を感じました。
ところで、日本は桜満開です。
明日4月11日は雨の予報です。週末はお花見どうでしょうか?
いい映画でしたね。ジョージ6世は、おそらくストレスも手伝って早死にしてしまったのが気の毒ではありますが。彼の育った境遇に比べれば、今のイギリスの二人の王子は、かなりのびのびしている感じです。
削除今、庭ではチューリップです。サクラも目にはするのですが、さすがにこちらでは、サクラの下での宴会は見ないです。週末晴れるといいですね。
匿名さんです。
削除URL 入れたのですが、不当と拒否されました。
ミラクルです。
もう少し時間をいただけたら、お知らせ出来ると思います。