東洋人=新型コロナウィルス

新型コロナウィルスの不安が漂う今日この頃、ロンドンへ行く電車に乗りました。さほど混んでいない車内、私が足を踏み込むと、車内の数人が妙にじろじろ私を見る。二人がけの座席に座り、次の駅へ着いた時、乗って来た男性の一人は、まず、私の前部の座席に腰を下ろそうとし、ふっと座っている私を見て、座席にすでにおいたカバンを取り上げ、そそくさと、私の後ろの座席へ回った・・・。これは、ウィルスを持っているんじゃないかと、避けられているなと思ったのですが、更に頭にくることに、この男性、風邪をひいているのか、私の後ろの席でごほごほと、ねちっこい咳をし始めたのです。「ウィルス持ってるのは、あんたじゃないか!」と心の中で叫びました。

そうです、昨今のイギリス、また、おそらく他の西欧諸国でも、「東洋系=新型コロナウィルスを持っている可能性大」という式ができあがってしまっている感があります。特に、イギリスで一番最初に発病した2人は、中国人の学生の多いイングランド北部の町、ヨークでのホテルで、ヨーク大学の中国人学生とその肉親でした。イギリス人にしてみれば、中国人、韓国人、日本人、シンガポール人、タイ人、インドネシア人、その他もろもろ、すべて一緒くたで、ほとんど区別つかず、黄色人種をみると、「こいつらは、危ない」。もっとも、日本と比べ、イギリス人で、マスクをしているという人は、あまりいません。マスクは、実際のところあまり予防にはならないという話はありますし。

かくなる私も、東洋人の少ない我が町のスーパーで、中国人らしき人をみたとき、なんとなく、ぱぱっと遠ざかったので、自分も偏見人間なんですけどね。人間の自己防御反応と言ってしまえばそれまでですが、自分が、いわれもなく避けられてしまう身になると、不快なものです。私は、比較的小柄で、座席に行儀よくちんまりすわるので、普段、混んでいる電車などでは、大柄のイギリス人は、選んで私の隣に座ったりという事が多かった(それはそれで有難くはないですが)のに、今度それが逆になると、心に風が吹きます。

先日のニュースなどでは、ロンドンに住んでいる中国人女性が、若い男に「コロナウィルス!」とののしられ、この男は、後ろからしばらくついてきて、罵り続けていた、という話をしていました。本当にウィルスが怖ければ、そんなついて行かずに、離れるのが常識とも思うのですが、きっと、その男は、内部に持っていた人種的偏見にかられて、いやがらせをしてやりたいという気持ちの方が強かったのでしょう。彼女も、ずっとロンドンに住んでいて、中国に帰ってなかったら、感染している可能性は、他のイギリス人と同様、ほとんどないわけなのですが、「あなたは、コロナウィルスが始まった時、どこにいましたか」などということを、町行く、一人一人に聞いて歩くわけにもいかないですし。

西欧への移民の数の増大、移民への憎悪が強まりつつある中、こうした事件は、ますます、西欧人のうちにくすぶっていた他民族の移民が増えすぎているという不満を、爆発させる要因にもなっている感じです。他民族の数が増える、それにより、母国の性質が一変するのではないかという潜在的不安も、テロ事件や、今回のウィルス騒ぎなどの、ネタを与えられると、表面化するのでしょう。イギリスのブレグジットの要因のひとつも、移民問題であると言われています。もっとも、ヨーロッパと決別したイギリスは、今後、中国やインドなどのヨーロッパ外の国々と、より密接に付き合う必要が出てくる事もありましょうから、ある意味、理不尽な決断です。まあ、移民のひとりとして、肩身の狭い時代となってきたものです。

ヨーロッパ旅行などは、こうした意味でも、このコロナウィルス騒動が収まるまで、待った方が良いかもしれませんね。不当な扱いを受けるという事もでてくるかもしれません。アメリカなどでも、実際、インフルエンザで死んでいる人の数の方が多いのに、コロナウィルスに対する恐怖の方が強いというニュースを耳にしました。

冬と共にウィルスが去り、せっかくの東京オリンピックまでには、なんとか下火になってくれているとよいですが。とりあえずは、集団パニックをおこさないように心掛けながら、マスクはともかく、手で目や鼻をやたらさわらないように、また、外出からもどったら、こまめに手を洗いましょう。

春よ来い、早く来い!

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