バンカーズ・ランプ

夕方の4時ともなると、薄暗くなるイギリスの冬。

先日は、ほぼ一日、晴れない霧がたちこめ、見慣れた町の公園も、摩周湖のごとく、いつもと違ったミステリアスな雰囲気を漂わせていました。こうした霧の中を歩くのも、ある意味では楽しいのですが、日が暮れてからは、ミステリアスでロマンチックな雰囲気も、切り裂きジャックが出そうな不穏な雰囲気と変わるので、夜までうろちょろすることも無く、さっさと暖かい室内へ戻り、読書やらをする時間が長くなる時期でもあります。今朝は、この辺りでは、今冬初めての雪まで降り、寒さもひとしお。

以前から、夜の読書用の気の利いた卓上ランプが欲しく、昔ながらの緑のガラスのシェードのついたバンカーズ・ランプ(バンカーズ・ライト)が気になっていたところです。バンカーズ・ランプは、名前の示すとおり、銀行員や、会計士など、卓上で細かい物を読む必要のある職業の人物が、ぎらぎらライトから、この緑のシェードで目を守るために使っていたもので、いまだ古めかしい図書館などにも供えてありそうな代物です。

こういうものは、インターネットで買いたくないので、先月、照明の専門店へ足を運び、「バンカーズ・ランプあります?」カウンターのむこうに座っていたおじさんは、それに答えて、はじかれたように立ち上がり、びっくりするようなスピードで、バンカーズ・ランプの3つのモデルが飾っている場所へ連れて行ってくれました。さほど大きな店でもないのに、3つモデルが置いてあったのは、この照明、今でも根強い人気があるのでしょう。一番気に入ったものを、さっそく買って戻りました。65ポンド。こういうのも、今や、メイド・イン・チャイナですが。

こうして購入すると、映画などに、このバンカーズ・ランプが映っていると、すぐ目に留まるようになってくるものです。最近DVDを買って見た007の「カジノ・ロワイヤル」のワンシーンで、卓上のバンカーズ・ランプに気がつき、また、ジャマイカのボブスレーチームを話題にした映画「クール・ランニング」をテレビで見たいたときに、ジャマイカのオフィスにまで、このランプが置かれていたのに気づき。

部屋の電灯をつけずに、これだけで、卓上は十分明るくなる上、やさしい緑色がほおーっと浮き立つ様子は、なかなかです。

暗い室内で、卓上だけが明るい方が、やっている事に集中できるものです。外部のものが遮断され、明かりが届く小さな円形の内部だけが、一時的に、自分の全世界になるような気がするのです。

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