チョコレートを溶かす水のように

メキシコも含めたラテンアメリカの数カ国で飲むホットチョコレートは、水を沸騰させ、その中に、ミルクチョコレートのかたまりを落として溶かすのだそうです。

"como agua para chocolate"「チョコレートを溶かす水のように」という表現は、ここから来ていて、情熱や官能の高まった気分、また、胸の中でふつふつと燃え上がる怒りをを現すのだとか。ふーむ。色気より食い気派なので、こんな話を聞いても、「おいしそーね。」という気が先立ちますが。私は、時にミルクを沸かして、ダークチョコレートを落として飲んだりします。

さて、直訳では、「チョコレートを溶かす水のように」というタイトルのこの映画は、メキシコの女流作家ラウラ・エスキヴェル(監督の以前の奥さんだそうです)の同名の小説が原作です。南米独特のマジカル・リアリズムあふれる不思議な世界。私もそうですが、ガブリエル・ガルシア・マルケスの小説などが好きな人には楽しい映画だと思います。日本語のタイトルは、「赤い薔薇ソースの伝説」、英語タイトルは、もう少し原作に忠実な「Like Water for Chocolate」。

時代は20世紀初頭、メキシコ革命の頃。アメリカとの国境も程近いメキシコにて。主人公のティタは料理が好き。美青年ペドロと愛し合っているけれども、母が、末娘のティタは親の面倒を見るべきだ、と結婚を許さず、ペドロは、仕方なく、姉と結婚する事に。結婚後も、ティタをずっと思い続けるのですが。

家の事を支配する母親の下で、思うように行かぬ人生の中、ティタの胸に湧き上がる行き場の無い情熱と怒りと悲しみのはけ口は、料理。ティタの調理したものを食べた者達は、料理のときにティタが抱いていたのと同じ感情を経験します。数々の不思議な出来事も楽しく、美しいお料理は目の保養。

面白かったのですが、ただひとつ、個人的な文句は、ペドロ役の役者さんの顔が濃すぎて、好みでなかったために、ティタの彼への情熱が理解できなかった事。それに、お姉さんと結婚した後、ちゃんとやる事はやって、子供も作っちゃってる彼の信念の無さも、なんとなく魅力ないし。私だったら、やさしくしてくれたお医者様と結婚するな・・・と思いましたが。

それにしても、飲食物と愛の関係は深いのですねと再確認。「ママ・ミーアの作った美味しい料理を食べると恍惚となる」と言っていたイタリア人の知り合いを思い出しました。

そういえば、明日はヴァレンタイン・デー。
The way to a man's heart is through his stomach.
(好きな男性のハートを得るには、まず胃袋から。)
などとも言いますから、腕まくりして赤い薔薇ソースでも作ってみるのは効果があるやもしれません。

当映画を英語で簡単に解説してあるビデオはこちら

原題: Como Agua Para Chocolate
原作:Laura Esquivel  "Como Agua Para Chocolate"
監督:Alfonso Arau
言語:スペイン語
1992年

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